生前贈与の活用と贈与契約書

その他

日本の金融資産は、全体の半分以上が60代以上の高齢者世帯に偏っています。

一方で、子供の教育や住宅購入など消費が活発な30代~40代の世帯の金融資産は少なく、それが景気を悪くしている面があります。

その世代間で偏った金融資産を、生前贈与により消費世代に移していく方法と注意点をまとめました。

生前贈与の活用

贈与とは、当事者の一方が自己の財産を無償(タダ)で相手方に与える意思を表示し、相手方が受託することによって成立する契約です。

よって、贈与契約は、贈与する人の「あげる」意思表示と、相手方の「もらう」意思表示があって成立します。

生前に自分の財産を他人に無償であげることを、「生前贈与」といいます。

余裕資金を次世代に生前贈与することにより、贈与者(あげる人)の所有する財産が減少しますので、相続税の軽減にもつながります。

そして、受贈者(もらう人)は、その資金を有効活用できます。

生前贈与を活用するポイントとして、基礎控除の活用があります。

受贈者(もらう人)1人につき年間110万円までの贈与は、贈与税が課されません。従って長期間に渡り、多くの人へ贈与することにより大きな金額を次の世代に渡していくことができます。

子供への贈与だけでなく、相続財産を受けられない孫に贈与した場合には相続税の課税される回数が少なくなります。

このような世代飛ばし贈与は、2世代にわたる相続税の軽減にもつながります。

注意点

注意点としては、被相続人の財産を相続して人が、相続開始(亡くなった日)前3年内に被相続人から贈与された財産は、基礎控除額(110万円)以下であっても、原則、相続財産に加算し、相続税が計算されますので早めの生前贈与が相続税の軽減にもなります。

又、争族にならないように①公平に贈与する②遺留分に配慮する③代償分割ができるように備えておくとといった点も挙げられます。

遺留分とは、民法で定められた相続人がそうぞくできる最低限の割合のことです。遺留分の計算の基礎となる財産には、遺産の他に、被相続人が無くなる前1年以内に贈与した財産や相続人に対する住宅購入の資金援助などの特別受益なども含まれます。

代償分割とは、遺産分割の際、他の相続人より多くの財産を相続した相続人が、もらいすぎの分について、自分の財産を他の相続人に渡す遺産分割の方法です。

そして、「贈与契約書」を作成しておくことも注意ポイントです。

贈与は、民法上の契約です。お互いの合意があって、はじめて贈与契約が成立します。贈与契約は口約束でも成立しますが、後日、本当に贈与があったのかどうか問題になることが少なくありません。

そのため、贈与の事実を証明するために、キチンと贈与契約書を作成しておくことが重要です。

贈与契約書作成のポイント

贈与契約書の書式は自由で、パソコンでも手書きでも問題ありません。

ただし、贈与契約書の署名と日付だけは、誰が見ても疑いのないようにするために、自筆(手書き)で記入するのが良いでしょう。

また、贈与契約書への押印は実印を使用することをお勧めします。実印でなくても契約書としては有効ですが、実印の方がより信頼性のある書類が出来上がります。

ちなみに、金銭を贈与する場合、印紙は不要です。

贈与契約書の作成を専門家に頼んでも良いですし、自分でも作成できます。自分で作成する際には以下のポイントをおさえておく必要があります。

①誰に ②いつ ③何を ④どんな条件で ⑤どうやってあげるのか

贈与契約書には最低限上記で挙げた5つの事項を盛り込む必要があります。このうちどれか1つでも抜けてしまえば、契約書として不備のあるものになってしまうため注意が必要です。

その他の注意点で、贈与を行う場合には、連年贈与が疑われないよう、下記の点において変化をつけることが大切になってきます。

※連年贈与とは、毎年繰り返し贈与を行い、実際は一括財産であったとみなされ、贈与財産全体に贈与税が課される可能性が生じてしまうこと。

贈与を行う月日を毎年違う日にする

毎年同じ月日に贈与を行うと「定期金の贈与」とみなされ、一括して贈与税がかかる可能性があります。

毎年の贈与額を変える

毎年同じ額の贈与を10年又は15年といったように長期にわたって続けてしまうと、贈与の開始時に全ての金額の贈与をする意思があったとみなされて、贈与財産に対して一括で贈与税がかかるケースがあります。

以上の注意点を踏まえた上で、日付・贈与財産・金額を意識する様にしましょう。例えば、1年目は100万の贈与をして2年目は80万円の贈与を行うといったような感じです。

また、年によっては非課税枠を超えた金額(例えば120万円)を贈与して、税務署に贈与税の申告を行い、贈与税を支払うといった変化をつけておくと、連年贈与に対する疑念がさらに解消することに繋がります。

贈与された現金の有効活用方法にいては以下の記事を参考にしてください。

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