住宅取得の中で、今住んでいる家を売って次の家を買う“住宅の住み替え”は、とても難易度が高いと言われています。失敗すると、想定外の大きなコストが発生してしまうこともあります。そこでその注意点について特に大事なポイントに絞ってまとめてみました。
1.誰に依頼するか
家の住み替えを検討するときに、売却をするときに高い査定を出してくれる不動産会社に買う方もお願いするのか、逆に買いたい物件を扱っている不動産買会社に売る方もお願いするのか、又は、売るのと、買うのと別々の不動産会社にお願いするのが良いのか悩まれるところだと思います。
結論は、信頼できる担当(エージェント)1人に、売るのも買うのも両方お願いするのが良いです。
まず、その担当者がそれなりの不動産取り扱いの経験があることは最低条件です。
次は、その不動産屋さんが信頼できるかどうか、どのように見極めれば良いか?ということになりますよね。
一番わかりやすい目安は、売却価格の査定は複数社で出してみて、その中で一番高い金額を出してくる不動産屋さんは、(全部が全部そうではありませんが)、信頼できない方に考えるのが良いでしょう。
過去色々見てきた経験から言えるのですが、業者が売却物件を預かりたい思いから、高い査定額になっていることが多いからです。
出てきた査定額に対して、どのようにその査定金額が出てきたのか根拠を確認してみてください。
その確認のポイントは、直近で実際に周辺の類似物件が売れている価格帯を参考に査定価格をだしているか?になります。
住み替えでは特に、早く、そして高く売れることが重要になります。
過去のご相談者で実際にあったことですが、一番高い査定を出した不動産会社で売りに出したのですが、しばらく売れず、最後は結局不動産買い取り業者に当初の売り出し価格の70%前後の価格で買ってもらった!という事例をいくつか見てきました。
そのような事後のご相談も多く、事後でやれることはその後に旅行などのライフイベントをあきらめたり等の支出の削減や資産運用で戻すしかありません。
行動を起こされる前にご相談にきていただけたら!と思ってしまう事例がとても多いです。
どうして、最後に買い取り業者等に安く売ってしまうようなことが起こってしまうかと言うと、買う方を先に進めたケースになるのですが、売る方の物件の売却が苦戦すると、心理的負担が相当重くなるからなのです。
売れるまで、売り出し中の家のローンの返済と、住み替えた先のローンの2重の住居費が、売れない間はかかり続けるため、だんだんあせりと心理的な負担がふくらんでいきます。
そこで、なかなか売れないという心理的負担から解放されたくて多少買取価格が下がっても早く買い取り業者に買ってもらおう、ということになってしまうのです。
更に、金融機関から新しい家の住宅ローンの借り入れ条件として、今の家をいつまでに売却して、その時のその売却資金の一定額を返済にあてること、といったことで住み替えを進めてしまっているケースもあり、
結局その期間に売れない場合には、その金融機関が進める買い取り業者に相場の70%前後で買ってもらう、というシナリオになってしまうことが多いのです。
よく売却を依頼する不動産業者側に、買取保証サービスというものがあったりするのですが、結局最後に相場の70%前後で買い取られるのは同じです。
買取保証がついているから安心と売却をお願いしたら最後、上記のような落とし穴に入ってしまう可能性が高いから注意が必要です。
最初から、高い価格で査定額を出して物件を預かり、なかなか売れない状況をつくり、最後は買い取り業者に買わせて、2重で利益をあげるというシナリオを不動産業者に描かれてしまっている場合もあるので注意が必要です。
家の住み替えは難易度が高いので、その厳しい面もちゃんと伝えてくれる担当(エージェント)かどうかを判断して依頼することが重要です。
売却の査定価格の根拠をしっかり伝えてくれて、その後の厳しいシナリオも伝えてくれる担当(エージェント)かどうかをしっかり見極めてください。
2.3つの媒介契約
不動産屋さんに家の売却を依頼する際には、その契約方法に以下の3種類があります。
①一般媒介契約
- 複数の業者に依頼がすることが出来る
- 契約の有効期限はありません
- 業者の売主への業務の処理状況の報告義務はありません
- 指定流通機構(レインズ)と言われる不動産業者間の流通サイトに登録義務はありません
②専任媒介契約
- 複数の業者に依頼することが出来ません
- 契約には、3か月間の有効期限があります
- 業者からの2週間に一度の売主への業務処理状況の報告義務があります
- 業者は、7日以内にレインズに登録しなければなりません
③専属専任媒介契約
- 複数の業者に依頼することができません
- 契約には、3か月間の有効期限があります
- 1週間に一度の売主への業務処理状況の報告義務があります
- 業者は、5日以内にレインズに登録しなければなりません
- 売主自ら買主を見つけても必ず業者が間に入ります
どれを選択すれば良いか
一見、複数社の不動産会社に依頼できる①の一般媒介契約が一番良いように感じられると思いますが注意が必要です。
不動産会社の側からしてみると、①の一般媒介契約の場合は、時間や労力とコストをかけたとしても、最後に他の業者で決まってしまうこともある媒介契約になります。
必然、同じ預かり物件でも一般媒介契約の物件には業者の力が入らないということになってしまいます。
どの媒介契約でいくかの1つの判断は、売れ筋物件は一般媒介契約でお願いして、普通の物件の場合には②や③の専任媒介契約で依頼するというのが良いのでは、と思います。
それでは、②専任媒介契約と③の専属専任媒介契約とではどちらが良いのか?
これは、業者を判断する観点にもなりますが、条件は③の専属専任媒介契約より②の専任媒介契約の方が売主にとっては良いので、③を薦めてくる業者はどうかな?とは思ってしまいます。
3.売るのが先か、買うのが先か
不動産は、欲しい物件が図って出てくるものでもありませんし、出てきてそれを買い仕損じたら、その物件を買うことはほぼ不可能です。
そのため、できれば買う方を先にできるのが理想です。
しかし難易度からすると、先に買う方が高くなります。
それは、手持ち資金で買うことができる方は別ですが、先に家を買ってしまうと、今の家が売れるまでは、新しい家の住宅ローンと今の家の住宅ローンなどの2重の住宅コスト負担が続いてしまうからです。
ましてや、前項でもお伝えしましたが、新たな住宅ローンを組む条件として、今の家の売却のタイムリミットを設定しなければならない場合にはなおさらです。
又先に買う場合は、今のローンが残っていては、新しいローンと合わせて2つのローンを持つという見方を銀行からされるので、それにも耐えられるくらいの高収入の方以外は審査に通らない場合も多いです。
売却のタイムリミットを設けることを条件に新たな住宅ローンを組んで家を先に購入する場合、その住み替えの当人へのプレッシャーは相当なものです。
住み替えの購入を先にする場合には、売る方の側面ではそのプレッシャーから逃れたくて、結局買い取り業者に安く売ってしまう!一方で業者はそういうシナリオをイメージして売却を預かる!という闇の中に入ってしまうことも多いのです。
だから住み替えは難易度が高いと言われ、その流れの組み立ては、自身の収入や物件力、購入したい物件の状況、そして、様々なシナリオを想定して、どの方針でいくのかの事業戦略をたてるような気持ちで行うことが必要になります。
コメント