その理由には、離婚や経済的な事情、仕事の関係や相続対策など様々あると思います。

そのような希望に反する状況において、「自宅に住み続けながら、売却資金を得ることができる」という取引形態に、リースバックというものがあります。

そこで今回は、そのリースバックについて詳しく見ていきたいと思います。

リースバックとは

「リース」とは“貸す”を意味し、「バック」は“戻す”という意味です。

要は、一旦売却して、それを貸し戻すという趣旨の取引になります。

自宅を売却し、所有権は買主に移転され、売却代金は売主が手にして、今度が売主・買主間で自宅の賃貸借契約を締結し、そのまま売主が賃借人の立場で住み続けることを、リースバックと呼んでいます。

一見特殊な取引形態のように思われますが、実は不動産業界では随分前から、当たり前に行われていた取引手法でもあります。

例えば、経済的な理由などで物件を手放さなければならない場合に、売主が引っ越し先を確保出来ず、やむ負えず売主・買主間で賃貸借契約を結び、売主が次の引っ越し先を確保できるまでの間、売主を住まわせておく、というようなケースがありました。

近年では、経済的な理由以外でも様々な理由への需要でこのリースバックが注目を浴びるようになり、専門で扱う専門業者が増えてきました。

リースバックへのニーズ

それでは、どんな場合にリースバックが必要とされるのかを見ていきたい思います。

〇住宅ローンの返済負担を軽減したい

ローンの返済の負担が重く、日々の生活費の捻出などが難しくなるような状況で、自宅売却後にリースバックにして賃貸に切り替えることで、今の家に住み続けたまま月々の負担を軽減できる場合があります。

〇カードローンや消費者金融などの借入返済のために

リースバックで一括して受け取った資金を使い、滞納してしまっている税金や借入金を返済することで差押を解除・回避することができます。

そして、売却後に買主と賃貸借契約を結ぶことで、自宅にそのまま住むことが可能になります。また、リースバックの年間賃料は売却価格の8~10%くらいですので、年利14~19%の延滞税や遅延損害金をよりも大幅に軽減できます。

なお、その後生活にゆとりが出てきた場合、希望があれば再度自宅を買い戻すことも可能です。

〇競売を回避するために

住宅ローンや借入金を滞納してしまい、自宅が競売にかけられてしまいそうになっている場合に、競売を回避するためには競売の改札日までに、債務の全額を返済するか自宅を任意売却しなければなりません。

競売を回避するために任意売却するという手法が一般的ですが、いずれにしても自宅を明け渡さなければなりませんでした。

そこで、任意売却とリースバックを併せて住み続けながら競売を回避する方法を目指せることができます。要は、投資家や投資会社に任意売却し、その買主に賃貸で貸してもらうという方法です。

これにより、競売で自宅を安くたたき売られることを回避し、なおかつ自宅を手放さずに済み続けることが可能になります。

しかし、債権者との調整や任意売却に応じてくれる投資家を探す必要があり難易度も高くなります。

〇事業資金の調達のために

リースバックは事業用不動産でも可能です。

例えば、事業のための資金の融資が下りなくて困っていて、所有の工場や事務所を売却してしまうと事業が継続できなくて困ってしまうような場合に、一度その工場や倉庫、事務所などの不動産を売却して資金を受け取り、売却した不動産はリース契約でそれまでと同様に継続して活用できる方法です。

不動産を売却した代金は、自由に事業用資金に活用することができ、また、事業が軌道に乗れば、将来的にその不動産を買い戻すことも可能になります。

〇相続対策や老後資金対策

相続税の納税資金対策や遺産分割対策にリースバックを活用することができます。

例えば遺産分割対策では、相続財産が不動産中心である場合、売却して現金で分けるにしても、相続不動産を売却するために先に相続登記をするか、相続人全員の署名捺印が必要になり煩雑な処理が必要になります。

先にリースバックで現金化しておけば、相続人同士で不動産の分け方をめぐって揉めたり、煩雑な手続きをする必要がなくなると同時に、被相続人本人のゆとりのある老後の生活資金や介護などの費用に充てる資金を確保することができます。

リースバックのメリットとデメリット

メリットは、何と言っても住み慣れた我が家を手放すことなく、大金を手に入れることができる点です。

お子さんが未だ学生のうちは、学区を変更したり生活しなれたコミュニティーを維持したいものです。リースバックを利用すれば、こうした問題を回避しつつ、資金を手にすることが出来ます。

又、維持修繕費などのメンテナンスや固定資産税などのランニングコストは買主負担になりますし、賃料を滞納しない限りは、一方的に退去を迫られる心配もありません。

デメリットは、毎月の賃料を支払わなければならないという点になります。

また通常の不動産売却に比べて、リースバックの売却価格は安めになることが多いです。

リースバック物件の買い手は、基本的に投資を目的として購入するわけですから、買取価格の決定は地域の相場ではなく、収益物件の利回りをベースに算出されることになります。

10年分~13年分の賃料相当及び、利回りが7%~10%と1つの基準になりますので、地域性や賃料設定によっては通常の売却価格を下回る結果になる可能性が多いです。

まとめ

いずれにしても、少子高齢化で人生100年時代の老後資金が確保が厳しくなる今後はますますリースバックの需要が増えてくると思われますので、老後生活資金捻出にための不動産活用の方法の知識の1つとしてノウハウを理解しておいて損はないと思います。

又、個人の投資家としての立場に立ってみると、新たな投資発掘の手段として非常に魅力的な取引手法になると思います。そういった観点からリースバック案件にアンテナを張っておいてもよいかもしれません。

いずれにしても、自宅を売却した後も思入れのある我が家に住み続けられるというのは、やはり非常に魅力のあることには変わりないと思います。