シングルマザーである母親が2004年に交通事故で亡くなり、叔父が未成年後見人として選任されたにもかかわらず、その母親の子供への死亡保険金6000万円を、その叔父は後見人の立場を悪用しギャンブル等に使い果たし、2007年に当時2歳だった男児を赤ちゃんポストに預け行方をくらます!という事件がありました。

その叔父は、2011年5月に、立ち回り先の愛知県警に出頭。東日本大震災の被災者の惨状を見て自分を振り返り、出頭する気もちになったということでした。

小さな子供を残して、交通事故で亡くなってしまったその母親のことを思うと、本当にいたたまれない気持ちになってしまいます。

この母親が、その時に生命保険信託を活用していたら、このような悲しい結末にならなかった!と思ってしまいます。

生命保険信託とは!

生命保険信託とは、信託銀行などが生命保険金受取人となり、万一の時に、死亡保険金を受け取り、保険契約者が生前に定めたご親族などに、あらかじめ決められた方法で、金銭を支払ってくれる契約方法になります。

例えば、お子様が未成年で、死亡保険金を受け取っても管理することができない場合、あらかじめ、「毎月、生活費として10万円を子供の世話をしてくれる人の口座に振り込む」などと決めておけば、信託銀行等がそのとおりに支払ってくれます。

このようにしておけば、先ほどの冒頭の事例のように一気に叔父が死亡保険金を使い果たしてしまうことはできなかったでしょう

又、信託銀行などが管理する財産の一部払い出しや支払い条件の変更などを行う「指図権者」を併せて決定することができまので、このような「指図権者」を決めておけば、未成年後見人が役目をはたしていなければ、後見人を被害が少ないうちに変えることができることになります。

生命保険信託の使われかた

①幼い子供や心身の障害、高齢などの理由により財産管理に不安のある家族や親族などのために、財産を確実に管理・保全しながら、生活資金や学費などその家族や親族などが必要とするときに必要な資金を受け取るようにする。

②法定相続にとらわれることなく、自分が経済的に支援したい人のために財産を活用できるようにしたい。

相続の形が、【家督相続】から【平等相続】になり、比較的そのことが理由による相続が争族になっている事例も多いです。

家業を継いだり、家に貢献した兄弟姉妹やそれが親族でなくても、そういった方たちにはそれなりの財産を継いでもらいたいという考え方【役割相続】で生命保険信託を活用することで、争族を少なくすることができるかもしれません。

③自分が亡くなった後も、一定期間、社会・公益のために財産を分割していきたい。(寄付等)

最後に

生命保険信託は、残された家族の財産管理に不安が残る場合、非常に有用な制度といえます。

一方で、通常の生命保険とは別に信託に関しての決して安くないコストが必要になりますので、コストに見合うかどうかを見ていくことも重要です。

生命保険信託は保険金という財産を残すための相続との関わりを見据えることも重要で、遺言書の作成や、財産管理であれば成年後見制度家族信託などのいくつかある方法の選択肢の1つとして検討していくのが良いでしょう。