家を買いたいと思っていきなり動くのは危険です。住宅購入の全体の流れとその流れの中で良く起こる失敗事例を頭に入れてから動くことはとても有益です。同じような失敗が回避でき、業者のペースではなく自分のペースで手続きをすすめることができるようになるからです。
住宅購入の全体の流れ
①物件見学
家を買おうと考えたら、今はまずネットで物件検索をすることから始める方が多いと思います。希望のエリアにどんな物件があるのか、価格帯はいくらぐらいなのか、マンションと戸建ではとどんな違いがあるのか、新築と中古の違いは等
そして検索している中で気に入った物件が出てきたら、その物件の掲載をしている業者に問い合わせをして、物件見学をする流れになると思います。
そして物件を見学して、気に入ったら購入申し込みです。
②購入申し込み
欲しい物件が見つかったら、購入申込書を売主に提出します。
ここでのポイントは申込書を提出したら、必ず売主が受理してくれるとは限らないことです。
多くの人は家を買う時に住宅ローンを使うと思いますが、売主側としては申し込み入れた人が住宅ローンを借りることができる人なのかどうかという点が気になるところです。
もし、受理した契約後に買主が住宅ローンの審査に落ちるようなことがあったら振り出しに戻ってしまいます。
そのため、買主の申込書と住宅ローンの事前審査が揃って初めて売主がその申込を受理してくれると想定しておくことがポイントです。
③不動産売買契約
不動産売買契約は、申し込みを入れて一番初めに来る土曜日か日曜日に契約となるケースが多くなります。
最近は購入者が不動産売買契約の前に建物検査を希望する場合もあるので、その建物検査が終了した最初の土日という場合もありますし、売主、買主共に平日でも可能なら平日の契約の場合もあります。
ここでの注意ポイントは 契約日当日は、買主の方が、売主側に比べて緊張を強いられる状況になるということです。
当日は多くの場合、売主側の業者事務所に売主、買主とそれぞれの業者が集まり、売主側の業者からとても多くの専門的な項目からなる重要事項説明書が読み上げられます。
専門的な項目なので丁寧に時間をかけて読み上げられるべきなのですが、とても多くの項目があるため、それをしていると時間がかかり過ぎてしまうことを避けるためか?とても速いスピードで読み上げられることが多いです。
ある意味契約の場所がアウェイでしかも難易度の高い重要事項説明の項目を早いスピードで読み上げられる更に緊張を強いられるという状況で、多くの場合不動産について素人の買主が、その内容をしっかり押さえて契約に至ることは至難の業です。
契約時には物件価格の5%前後の手付金を支払い、契約後にキャンセルする場合にはそのその手付金は戻ってきませんので、しっかり心の準備をして契約に臨むことが重要になります。
④住宅ローンの選定
不動産の売買契約が済んだら、次は住宅ローン選びです。
先ほど住宅ローンの事前審査の話をしましたが、それは契約自体を前にすすめるための売主への安心材料だと考えてください。
実際に進める住宅ローンは、この不動産の契約の決済日に間に合う限り自由に決めることができます。
注意しなければいけないのは、不動産の売買契約書に買主の住宅ローンの承認期日というものが設定されますが、その承認期日までに住宅ローンの本審査の結果を買主が取得できない場合には、その不動産の契約自体が白紙解除になってしまうことがあるという点です。
そこで、白紙解除にならないように押さえで、既に事前審査を取っておいた住宅ローンを不動産売買契約後すぐに本審査に進めておくことが重要になります。
⑤金銭消費貸借契約
金銭消費貸借契約とは金銭の貸し借りに関する契約のことで、通常決済・引き渡しの一週間から10日位前に行われることが多いです
住宅ローンの事前審査が通り次に本審査の申し込みをしてそれが通り、そして住宅ローンの契約であるこの金銭消費貸借契約という流れになります
先ほど決済に間に合えばと書いたのですが、正式には、この金銭消費貸借契約のタイミングに間に合うスケジュールで、住宅ローン選びの検討は続けられるということになります。
⑥引き渡し前現地立会い
物件を引き渡し前の、買主の現地最終チェックのことです。
当日は、売主もその業者も現地に集まり、売主の家財などが無くなった後の壁などに傷や損傷などが無いか、現地の隣との境界が明確か、隣からの越境物はないかなどの最終チェックを行います。
万が一何か問題があったら、その対処や修復期間も想定して、引渡しの1週間より前にくらいに行えることが理想です。
⑦決済と物件の引渡し
最後になりますが、決済とはお金の清算のことで、買主から売主への残代金の支払いや各担当者への諸費用の支払いをすることで、その決済終了後に物件の引き渡しが行われます。
通常は、買主が住宅ローンを借りる銀行のブースで行われることが一般的です。
契約の時は売主側業者のブースで主導権は売主側にあり、決済引渡しの時は買主側の銀行のブースで主導権が買主側に移る、といった感じでしょうか。
不動産売買契約の時のメンバーに司法書士が加わり、最初に司法書士が双方の登記手続き等のための書類上の確認をして問題が無ければ、お金の清算に進みます。
お金の清算の流れは、銀行から買主の住宅ローンの借入金額が一旦買主の銀行口座に一瞬入り、すぐそこからスライドするように売主の口座へ残代金相当の金額が移され(支払われ)、売主がその着金確認をします。
そして、家の鍵が売主から買主へ引き渡されるという流れになります。
最後に、決済終了後、司法書士が当日中に登記の権利移転を行います。
流れの中で良く起こる失敗事例
①物件見学での失敗事例
ネットで物件を探していて複数現地見学をしたい物件が見つかると、それぞれの業者に連絡をして物件見学を依頼しなければならないと思われるかもしれません。
大抵1回の物件見学だけで買いたい物件に出会うことは難しいので、継続して物件見学を続けることになるケースが多いです。
気を付けなければいけないことは、一度見学した後は、その複数の業者さんからの営業攻勢にあい、そこから自分のペースではなく、業者さんのペースの中にのせられてしまうことです。
営業成績が良いある意味優秀な営業マンがついてしまったら、なおさらです。
住宅購入という経験はほとんどの方が初めての経験です。そのため多くの場合不動産購入のステップは不動産業者のペースで進んでしまうことが多く、気が付いたら家を買っていた!なんてことになってしまうことも多いです。
実際にあった事例で、何となく家が欲しくなり興味本位で不動産屋さんに連絡をして物件見学をしたら、実際見ると欲しい気持ちが湧き上ってきたのとその営業マンに更に持ち上げられて、あれよあれよという間に家を買うことになり、
しかし数年たって、その方に子供が誕生して買った家が手狭になり、結局すぐに住み替えなければならなくなったというご相談者の事例がありました。
ここでの回避策は、自分のライフプランを共有してもらえる信頼のおける不動産の担当を見極めて、その1人の担当に絞って物件見学を依頼することです。
現在だけでなく、生涯の人生設計(ライフプラン)を理解して共有してもらえる担当が理想です。
そのためにも、動き出す前に自分のライフプランを考えてみることが重要になってきます。
②購入申込での失敗事例
物件見学をして一目ぼれをして、しかも他にも検討している人がいる!なんて聞かされたら、購入条件もおろそかに急いで申込を入れてしまう方が多いです。
実際にあった失敗事例ですが、他にも購入申し込みを考えている人がいるとのこで、ご主人単独であわてて申し込んでしまい、契約後に夫婦2人での契約内容に変更したいということになって、契約後変更手続きをした方がいました。
しかしそのせいで住宅ローンの申し込みに必要な書類の提出が遅れ、結果引き渡し日を延期しなければならなくなってしまったご相談者の事例です。
怖いのは、引き渡しを早める場合はスムーズにいくことが多いのですが、延期は売主が承諾しなければ違約金を払わなければいけない事態にもなり得るということです。
というのも、売主が決済の資金を宛てに動き出してしまっていることもあるからです。
ここでの回避策は、不動産売買契約の前に、資金計画とローン計画をたてておき、1人で借りるのか夫婦2人で借りるのか、どこでローンを借りたいかなどの想定をしておくことです。
③ 不動産売買契約での失敗事例
契約当日は、売主と買主そしてそれぞれ業者が万障繰り合わせて集まり進められます。
契約の場所は通常、重要事項説明書を読み上げる予定の売主業者側のブースに集まって行われます。
これは、買主にとってある意味アウェー(売主のテリトリー)で、しかも人生の中で一番高い買い物をしなければならないということになります。
このような状況で買主にとって緊張が強いられる中、重要事項説明書の内容は専門的な内容で、加えて多くの項目からなり、そしてその説明が売主側(売主業者)からされることになります。
重要事項説明は相当数の項目になるため、時間がかかりすぎることを避けるためか?、実務上売主業者の説明はとても早いスピードで読み上げられる傾向が多いです。
読むスピードが速いのは、売主側業者の早くハンコを押してもらいたいという思いもあるかもしれません。
このような状況の中いきなり本番で、買主がその内容を詳細にマイナスポイントも含め把握をして契約することが難しいことが想像できると思います。
よくおこりがちな失敗事例として、不動産売買契約を終え後で時間が取れる時にその重要事項説明書を読み返すと、不安になることが複数書いてあるのを発見してしまうということです。
それが小さなことだったら目をつぶれますが、これを知っていたら契約しなかったということを後で発見してしまったら後の祭りです。
契約後のキャンセルは手付金を放棄しなければならず、実際に契約後にキャンセルされる方も多くはないですが、後ををたちません。
実際にそのようなご相談者が年に1~2人くらい私のところに来られます。
ここでの回避策は、重要事項説明書を契約当日より前の日に先方の業者よりもらって買う側の目で事前チェックをするということです。
そのチェックポイントは、既にその不動産の良いことは把握して購入しようと考えているので、マイナスの内容に絞って調査するということです。
④ 住宅ローンの選定での失敗事例
ここでの良くありがちな失敗は、売主側に決済までの期間を短く設定されてしまい自分が本来組みたい住宅ローンではスケジュール的に間に合わなくなるということです。
売主側は引っ越しのタイミングなどの事情が無ければ、普通は早く資金を回収したい心理が働きますので、買主側が受け身で進めてしまうと、契約から決済までのスケジュールを買主側にとって不都合な短いスケジュールに組まれてしまう傾向があります。
実際にあった失敗事例ですが、契約から決済引渡しまでの日程を売主側に短期間に設定されてしまい、スケジュール的に希望の住宅ローンを組むことができず、泣く泣く事前審査を通した金利の高い金融機関で進めざる負えなくなったというご相談者は結構いらっしゃいます。
ここでの回避策は、事前に住宅ローンを方針を決めておき、その銀行にスケジュール感を確認しておくことです。その上で住宅購入の全体の流れをつかんですすめればクリアできます。
特に金利などのコストが低いネット銀行は、比較的審査の結果や決済までのスケジュールに時間がかかる傾向にありますので、検討を考えているネット銀行には事前に連絡をして、申込から資金実行までのおおよそのスケジュール感を聞いておくことが重要です。
⑤金銭消費貸借契約での失敗事例
ここでの良くありがちな失敗事例は、必要な火災保険や住宅ローンの団体信用生命保険の特約をここで銀行から進められ、不必要な特約がついた高い火災保険や団体信用生命の不必要な特約に加入してしまうということです。
火災保険はどこで加入しても良いのですが、住宅購入という流れのなかでは、買主は住宅の契約の方にエネルギーが取られ、火災保険のことや住宅ローンに付く生命保険(団体信用生命保険)の特約のことまでは気を回すことが大変なのが実際です。
sこで、ほとんどの銀行が損害保険の代理店もしているので、その銀行で火災保険も契約するという流れになってしまう傾向が多いです。
不思議なもので、何千万円という大きな住宅の買い物をする時に、数十万円の火災保険についてはお金の感覚がマヒしてしまう傾向があるのかもしれませんが、
後でご相談者の火災保険を拝見したりする機会もあり、それを見ると不必要な特約等がついて、それを見直すと5万円、10万円下げられることがとても多いです。
何もない時に火災保険に入る時には、5万円、10万円の差に敏感になると思いますが、何故か家を購入する時に一緒に保険のことを考えるときには、どんぶり勘定になってしまう傾向があります。
銀行やそれをサポートする損害保険会社も、そのような心理を見越して、フルバージョンの火災保険の見積もりを出してくるのでは、などと思ってしまします。
ここでの回避策は、家を買うときの火災保険はフルバージョンで提案される傾向が多いので、どれを選ぶかではなく、どう削れるかという目で検討する
まとめ
以下に失敗の回避方法をまとめます。
- 自分のライフプランを共有できる担当を見極めて、その1人の担当に絞って物件見学を依頼すること
- 不動産購入の申し込みの前に、資金計画とローン計画をたてておき、1人で借りるのか夫婦2人で借りるのか、どこでローンを借りたいかなどの想定をしておく
- 契約の時に読み上げられる重要事項説明書は、事前に業者よりもらっておき、特にマイナス部分のチェックをしておく
- 事前に借りたい住宅ローンは考えて起き、特にネット銀行には申込から決済までのスケジュール感を確認しておく。その上で住宅購入の全体の流れをつかんで進める
- 住宅購入の流れの中にある火災保険の契約や団体信用生命保険の特約の検討も手を抜かない
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