最近独身の方のFP相談が多いのですが。その中で生命保険は必要か?という質問をよくいただきます。そこで、その点についてFPとして考えていることをまとめてみたいと思います。生命保険の保障のカテゴリーは大きく分けて、遺族保障、整理資金保障、医療保障、とその他(近年登場し始めた介護保障や収入保障など)があり、1つ1つ見ていきたいと思います。
はじめに
今一番多いご相談のテーマは肌感覚で、老後への資産形成についてですが、それだけ老後を心配されている方が多くなっているのだと思います。国に将来を頼れないということが、国民の意識に浸透し始めているからだと思います。ここ近年で税金や社会保険料が増え、一方でその見返りである社会保障はどんどん減ってきています。一番の理由は、少子高齢化で税金や社会保険料を払う働く世代よりも医療保障を受けたり年金を受け取る高齢者の割合が増えていることにあり、例えば65歳以上の人口割合を見ると、2015年は26.6%であったものが、2045年には36.8%になるというデータが出ています。日本の社会保障制度は現役世代が高齢者を支える仕組みになっていますので、現在約2人で1人の高齢者を支えているのが、2045年には現役世代1.4人で高齢者1人を支えなければいけない状況となります。近年の公的医療保険制度の自己負担割合の推移だけを見てみると、被保険者の負担が1984年~1割→1997年~2割→2003年~現在の3割とどんどん増えていっています。高齢者に関する制度としては、1983年~(限度あり)自己負担0→2001年~1割→2002年に現役並み所得者は2割→2006年には現役並み所得者は3割、そして2008年に「後期高齢者医療制度」が導入され今に至っています。このように自己負担割合が増えていて、その万が一に対応できる資産を持っておくことや、その資産で対応できない場合に適切に民間の生命保険の準備もしておくことが重要になってきています。そこで以下に必要な保障を5項目に分け、ポイントを見ていきます。
遺族保障
遺族保障は、自分に万が一(死亡)の時に必要になる家族のための保障です。独身の方の場合の家族は、両親や兄弟、ご健在の場合ご祖父とご祖母になると思いますが、自分が亡くなることで生活が困る家族がいる場合には、この保障が必要になります。例えばご両親の年金収入が少なく年金だけでは生活ができないようなケースでは、受取人をご両親にしてご両親の平均寿命位までの不足分の金額を保険で準備しておく必要があります。でも、そのような少ないケースを除いて、自身の長生きリスクに備える方が最重要になります。結構見受けられるのですが、自分が亡くなった時に1000万円とか2000万円とか保険金だ出る保険をかけていたら、それは明らかにかけすぎなので、保障を減らしてその分安くなった保険料を将来の資産形成のためにあててください。
整理資金
それでは、独身の場合には全く死亡保障の保険が必要ないか!?ですが、結論一定の金額は必要です。それが、整理資金という保障項目になりますが、それはまさに自身を身を整理するための資金のことをいい、葬儀代やお墓台、住居の清算、直前に療養をしていたらその療養費の清算などの資金のことを言います。平均的にはその金額は、お墓があれば300万円、なければ500万円前後で、準備する場合にはほとんどの方はその金額を目安に準備しています。この金額は保険で必ず準備しなければいけいないわけでなく、貯蓄で準備するという考え方ももちろんあります。今充分な貯蓄があれば保険で整理資金を準備する必要がないという考え方もできます。ただその充分な貯蓄は、自分にとってはどれくらいか?ということが考えることがポイントになります。この先結婚して子育て中に亡くなるかもしれませんし、住宅を購入して住宅ローンの返済中に亡くなるかもしれませんし、又年金で生活している時に亡くなるかもしれないということをイメージしておくことが必要です。今仮に500万円の貯蓄があったとしても、将来の様々なライフイベント中はどうなのか?併せて、インフレのことも考える必要があります。日本政府のインフレ目標2%です。予定通り2%で推移したら仮に今ある100万円の価値は、10年後に82万円、20年後に約67万円と価値が目減りしていきます。将来の様々なライフイベントの時の資産状況やインフレまで考えて整理資金を準備しておくのは少し煩わしく感じます。そのような場合には、私は保険で準備することをお勧めしています。整理資金は保険で準備するのが相性が良いと考えてますが、その場合に適している保険は、変額終身保険という商品です。その理由は、保険ならいつのタイミングで亡くなったとしてもかけた同一の金額が支払われます。特に貯蓄と違って保険をかけた翌日に万が一があっても掛けた同一の金額が支払われます。又、変額終身保険という商品の性質から、インフレしていった場合にも掛けた保険金額を保障しながら一定部分インフレに対応して保障も増額します。(運用成績によっては確定でないことに注意)今後様々なライフプランにおける資金とは別に性資金を保険で準備するのはスッキリします。
医療保障
最近医療保険はいらない!という書籍やネットでの情報発信がにぎわっています。その理由は日本の公的医療制度の保障が厚く、自己負担分は貯蓄で賄えるからという考え方です。書籍やネットで注目されるためには、極端なメッセージを投げかけると人の目が集まるためそういう書き方になっていることには注意が必要です。そのことを前提に、いる、いらない、両方の側から見て検討を進めることが大切です。それでは医療保険必要派の考えは、先進医療や自由診療などの場合には公的医療保険制度では保障されないため、実際に先進医療や自由診療の治療費はとても高額になるのと、公的医療保障制度の保障の充実度が今後も続くかわからないという考え方が多いです。公的医療の保障を除いた自己負担割合は実際に被保険者1984年~1割負担から1997年~2割、2003年~3割とどんどん増えてきています。今後の急激な少子高齢化を考えると自己負担割合はまだ増えると考えて準備する方が分があると思います。保険はいらないと考える理由の1つが、不必要な特約保障をつけて保険料を高く支払うケースです。私は必要な保障だけをピンポイントでできるだけ安く準備するのは良いと考えてます。必要な保障を考えるポイントは、頻度は少ないがそのリスク(病状)になった時に治療費がとても大きく生活に支障が出るものに対しては保険で準備して、そうでないリスク(病状)部分の保障はバッサリと削ってしまえば保険料は案外安くできます。加入時の年齢にもよりますが、対費用効果考えて充分医療保険で備えても良い金額になることが多いです。
老後保障
日本人は保険好きで、保険で貯蓄もしている人も多いです。しかし今後は保障は保険、資産形成は資産形成の商品(NISAやイデコ、AI運用等)と分けて考えるのがスタンダードになると思います。その理由は、効率的に資産運用をしないと老後の不足資金に足りなくなる人が多くなってしまうということによります。昭和の時代の日本が高度成長で豊かだった時代は、勤めた会社ではリストラなどなく一生勤め上げることができ、その会社の退職金と国からの年金だけで老後は十分生活せきる世の中でした。現在及びこれからは、日本は成熟から人口減少と高齢化社会に突入、会社のリストラもあり、もらえるかわからない退職金とどんどん減らされる国からの年金だけでは到底老後の生活がなりたたない状況です。豊かな時代なら、低利回りでコスト高の保険で老後資金の貯蓄をするような無駄が許されたかもしれませんが、もうそんな余裕のある人は限られます。単純に資産形成を考えるならば、適切な資産形成商品で資産運用するのと、資産形成のできる保険商品で運用する場合の将来の差は、その期間が長くなればなるほど、びっくりするくらいの差になります。譲って保険商品で資産運用を考える場合は、保障のニーズもあって、その一部分だけ資産運用の機能も持たせた保険商品で準備する場合は考えても良いかもしれません。
その他
その他保険で準備できる項目には、介護保障や所得補償などありますが、優先順位から考えてこれらの保険はその他の項目に入れさせていただきました。保険も必要を考えればきりがありません。そこで保険を準備する意味の原点を考えると、保険で準備するリスクは、起こる頻度は少ないが、万が一起こったら日常の生活に大きな打撃になってしまうようなリスクを考え、そうではなく頻度はそこそこあるが、万が一そのリスクが発生したとしても、保有している資産の一部でカバーできるようなリスクにたいしては、貯蓄でカバーするという考えが大切です。そのことから、資産形成が進めば進むほど保険を必要とする部分が少なくなり、何もおこならなければそれがそのまま資産になるという好循環を作ることが最良です。そのためにもNISAやイデコを活用資産運用を進めながら、保険とのバランスを考え、資産形成が進むにつれて保険を減らしていくことを目指しましょう。
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